THE BAKE MAGAZINE

「子どもの頃の体験」は未来に残る。東京モーターショーで異彩を放った、クリエイターたちの挑戦

2015.11.07
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こんにちは! THE BAKE MAGAZINE編集長の塩谷です。

ある日突然私のところに「東京モーターショー」への招待状が届きました。

なんでも、TOYOTAブースの中にクリイエイティビティ溢れる何かスゴいのがあるとのこと。すごくざっくりした情報ですが、企業とクリエイターの協業を追いかけていこう! と思っていたばかり。興味津々ではありますが…


私は車なし、免許なし、実家の車の車種すら言えないような車と縁遠い人間です。丸腰で取材に向かうのは不安ゆえ、車好きのBAKEインターン女子大生「たるちゃん」を誘ってみました。


たるちゃん

たるちゃん




塩谷舞
「ねぇねぇ、モーターショーに取材に行きたいんだけど、たるちゃん車詳しいし、ぜひ一緒に……」



車好きたるちゃん「あっ、もう昨日行ってきました〜!今年は何と言っても、マツダのロータリーエンジン復活ですよね!いま燃費リッター33キロ以上走る一般車も多い中で、ロータリーエンジンを積んでリッター4キロしか走らないRX-7を愛している根強いファンがいるんですよね…!熱い!前回のモーターショーではトヨタとスバルが協力して86つくったり、あっスバル側はBRZという名前で出していますけど、そうやって各社スポーツカーを復活させたりして今の車業界はスポーツカーが激アツですよね!塩谷さん的に、スポーツカーが復活していくこの熱量、どう思われます?!」


塩谷舞
「………。」



車好きたるちゃん
「でもでも。今年のモーターショーの入り口としてはやっぱり、ベンツの自動運転が一番インパクトが大きいですよね、塩谷さんもやっぱりベンツですか?」




一緒に行ったところで彼女の好奇心の足かせにしかならなさそうなので、ソロで乗り込むことにしました。

初めての東京モーターショーにクラクラ

さてさて。やってきました東京モーターショー。

ビッグサイト

来たぜ東京ビッグサイト!中に入ってみると……

ガチモデルお姉さん

スーパーモデルみたいなお姉さん。

ゴルファーみたいなお姉さん

プロゴルファーみたいなお姉さん。

サーキットなお姉さん

サーキットにいそうなお姉さん。

にゃんにゃんお姉さん

にゃんにゃんしてるお姉さん。

各社お姉さんが勢揃いです。車よりお姉さんが目について取材になりません。みんなカメラ向けるとキメてくださって、こっちが恥ずかしというか申し訳ないというか……。なにこれ、すごいよ東京モーターショー。お姉さんショーじゃないですか。

そうしてさまよっている中で、何かスゴいのをこしらえた、というTOYOTAブースを発見。

TOYOTAブース

会場はほとんど男性です。

中に入ってみると……ありました!たぶんこれです。スゴいやつ。

TOYOTAブース

中央にあるのは、今回のモーターショーで世界で初めておひろめされた、「FCVコンセプトカー」というものだそう。

水素タンクが積まれていて、この車だけでも水素を作ることができるし、それを他の車ともシェアできるみたい。車としての寿命を終えても“発電装置”として使うことが出来る、未来の車だそうです。

「これがスゴいやつか〜〜!」と思いながら見ていると・・・・・・・



ショーが始まりました!!!

「これからの時代は、エコカーから、エネカーへ……」というアナウンスとともに、ドームの中が暗くなり、子どもたちが登場。

th_FCVPLUS_Photo2_1107

子どもたちがおよそ20年後の未来にタイムスリップし、子どもたちはアトラクションの中で電気を生み出したり、その電気をほかの人とシェアしたり……

エンディングには花火が打ち上がります。ばんざーい!ばんざーい!

東京モーターショー

mai shiotaniさん(@ciotan)が投稿した動画 –



未来の空間には子どもが10名弱ほど。それを見守る大人は……

すごい人

めっちゃいっぱいいます。

コンセプトイラスト

子どもたちだけが、未来の世界に入れるだなんて……。なんだか、ノアの箱船みたいだなぁ……その頃の未来に僕らは立っているのかな……と物思いにふけっておりますと背後から突然……

PARTY中村洋基
「塩谷さん、これ次の回にはぜひ参加してみてよ」



この方は、クリエイティブ・ラボPARTYのクリエイティブディレクター、中村洋基さんです。

PARTY クリエイティブディレクター 中村洋基さん
電通に入社後、インタラクティブキャンペーンを手がけるテクニカルディレクターとして活躍。2011年、4人のメンバーとともにPARTYを設立。国内外200以上の広告賞の受賞歴があり、審査員歴も多数。はあちゅうクラスタ。

 

th_塩谷舞
「ひいっ!中村さん、あなたがこのユートピアを作られたのですか」



PARTY中村洋基
「ですです」



th_塩谷舞
「企業とクリエイターの協業を取材しているのです。詳しく教えてください!」



PARTY中村洋基
「話す前に、参加してみよう」



th_塩谷舞
「押忍!現場主義!」



ということで………





1時間後……




さみしい

やばい……。

想像以上につらい。

座高と身長

サイズ感が同じくらいに見えますけど、これ、左の子は立ってますからね。身長と座高ですからね。

ハメられた……公開処刑や………

すごいギャラリーいる……その視線の先には、3歳、4歳、5歳、そして27歳………

もうお母さんのフリしよう……私はこの子らのお母さんや……





と思っていましたが!

お姉さんですよ

いやー開始するやいなや、普通にテンションあがりましたね。自分を取り囲む360°の世界はすんごい鮮やかに映像が変わるし、それに合わせて音響も四方八方から響いてくるし、自分が動くと動くだけキラキラするんですよここ。童心帰りで夢中ですわ。

中でもみんなが一番テンションがあがったのは…

牛ふん

ここですね。わかりますか?「牛のうんちを踏むと水素が出てくる」というセンセーショナルなシーンです。これには、お子さま大喜びですが、27歳のわたくしは「マジかよ」とビックリしながら踏みつけていました。

調べてみたところ……

種菌を接種することなく牛のふん尿スラリーを75℃で嫌気発酵させると、水素消費細菌の活性を抑制しながら、牛ふんに内在する水素生産菌により水素を生産できる。
農研機構Webサイトより

……実際は嫌気発酵させなきゃいけないみたいですね。でも、知らなかった。牛のうんちから水素が出来るなんて。牛乳も水素も出せるなんて、腸内どうなってんの!


そんなことにビックリしながら、アトラクションは続き……

お姉さんぶる

いよいよ終盤に。エンドロールが流れます。

椎名林檎?!

めっちゃ楽しかった。でも、かなり疲れました。この写真を見て、ナレーションが椎名林檎さんということに後ほど衝撃を受けました。どんだけリッチなキャスティングだよ。

制作した人たちにお話を聞いてみよう

しっかり舞台裏も見学させていただきましょう。

映像を操作するPCに……
裏側

センサーを制御しているPC……
裏側かっこいい

そして「ちょっとお話聞かせてください」と言ったら、現場にいるクリエーター全員が出てきた。そこで、こんなリンチみたいな絵になりました。みんな暇なの?

囲まれ取材

彼ら全員がいろんなことを教えてくれたのですが、紙面の都合もありますので箇条書きにしましょう。

・企画とデザインをPARTY、システムを1→10 design、映像を白組が担当した


・信じられないくらいシステムが安定してるので、全員取材に来ちゃったよ


・1台の車と12台のプロジェクターと12台のパソコンと15個のアプリと6台の照明と4種19個のセンサーと約50mの巨大ディスプレイが全部連携して動いている


・床にも壁にも空間にもセンサーがあって、子どもの身長によって微調整している


・サイバーな「おかあさんといっしょ」を目指したよ





要約すると「すごいことに挑戦したけど、バグが出てないぞ」ということに尽きると思います。これは当たり前ながらめちゃくちゃ難しいことで、よく美術館なんかでもテクノロジー系の作品は「調整中」の札がかかっていて、そうなるとマジで無意味な物体になりますからね。

テクニカルディレクターのPARTY・清水幹太さんは、モーターショーのためニューヨークのオフィスから一時帰国しましたが……

th_qanta
「今回は1→10 designのエンジニア陣がホントに優秀で、僕はもう、彼らの優秀っぷりに感謝するという役割でしたよ……」



バグを起こさず、子どもたちに未来を見せてあげたエンジニア陣に最大のリスペクトを贈りたいです。

ちなみに子どもたちが最も大喜びしていた「うんちシーン」はこんな感じで動かされていました。

th_操作パネル

th_うんこ開始

「うんち制御」などを担当したエンジニアの坪倉さん曰く……

th_坪倉さん
「子どもが、牛のウンコのシーンで予想以上に興奮しちゃって、どんどん踏み潰していき、深刻なウンコ不足になったんです。そのため最初は牛1頭につき3つ出してたんですけど、今は5連発で出すようにしました」


th_塩谷舞
「そうだったんですね。なんかすんません、一緒にテンションあがっちゃって」





と。ここまで子どもと一緒にうんちうんちとはしゃいでますが、この展示で伝えたいことは、およそ20年後の社会のこと。クリエイティブディレクターの中村さんが、展示そのもののコンセプトを教えてくれました。


PARTY中村洋基「近い将来、深刻なエネルギー問題に直面するのは僕たちではなく、子どもたちです。そのことを伝えていかなければいけない。モーターショーという場所に遊びに連れてこられた子たちが、『未来で水素を生み出した』という記憶がうっすら残ってくれると嬉しいです。子どもは体感として覚えていて、大人たちは子どもの姿を通して、今の課題として認識する。そういう、世代を超えた二方向からの学びがある展示にしたかったんです」




この話を聞いたとき、私は東京都現代美術館の学芸員、藪前知子さんの記事を思い出しました。

私はそのとき、美術とはおそらく遅いメディアなのだ、ということを語ったように思う。ある現実の影響が現れるのも、受け手に変容をもたらすのも、おそらくは他の表現に比べれば緩慢だろうが、一方で遠い未来へと生き残ることもできるのがその強みではないかと。

来年の夏の子どものための展覧会に出品される作品は、その場で消えてしまう刺激ではなく、彼らの内部深くに埋め込まれ、しかるべき後に形となり、未来を変えていくような美術の力を試すものにしたい。「子どものための」という冠にこそ、美術展としての批評性があるのではないか──。納得してもらえたかはわからないが、彼と話したのはそれが最後となってしまった。

http://bitecho.me/2015/09/29_380.htmlより

子どもたちに伝える、未来の広告

この展示は美術ではなく、広告という装置の上に成り立っているけれども、子どものボンヤリとした記憶の中に、何か備えられるものはあるかもしれない。

そんな意義あるインスタレーションを提案したPARTYさん、さすがだなぁと思いました。公開処刑はされましたが、とても良い勉強になりました。



大きな企業の義務でもある社会的なメッセージ。それをどのように伝えるか?

日本を、世界を、地球をつくる企業。大小問わずに課題はありますが、大企業となると負うべき責任も大きいものです。

でも消費者に対して、カタい話を伝えるのは、難しいのです。相手が子どもであれば余計に難しい。

そんな課題を前に「モーターショーだから車に乗ってもらおう!」と提案するのではなく、今の時代の最大限のテクノロジーをもって、未来の体験をプレゼントする。

これはすごく素敵な企業広告だ……と思いながら帰路に着いたのでした。

モーターショーは明日まで。きになる方は、ぜひ遊びに行ってみてくださいね!

Creative Director:清水幹太・中村洋基(PARTY)
Director / Art Director:寺島圭佑(PARTY)
Planner / Technical Director:中村大祐(PARTY)
Copywriter:尾上永晃(電通)
Account Director:田中潤(PARTY)
Project Manager:阿久津達彦・木部喬(PARTY)
Producer / Project Manager:山中啓司(1→10design)
Technical Director:北島ハリー(1→10design)
Installation Developer:坪倉輝明・赤川純一(1→10design)
Project Manager:中間じゅん(1→10design)
Music:片岡知子(マニュアル・オブ・エラーズ)
Sound Effects:山口優(マニュアル・オブ・エラーズ)
Narrator:椎名林檎(黒猫堂)
Producer:井上浩正(白組)
Line Producer:羽原直栄(白組)
CG Director:小野航・高橋正紀(白組)

→TOYOTA FCV PLUS(PARTY)

Text by 塩谷舞( @ciotan

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