2011年頃から大流行したコワーキングスペース。数多ある中で、成功してる運営会社の心得って?

2016.07.13
左から、THE BAKE MAGAZINE編集長の塩谷、リクルートホールディングスの岩本亜弓さん、co-ba事業部マネージャーの奥澤菜採さん、ライターの石川。
左から、THE BAKE MAGAZINE編集長の塩谷、リクルートホールディングスの岩本亜弓さん、co-ba事業部マネージャーの奥澤菜採さん、ライターの石川。

2011年頃から急速に増えた「コワーキングスペース」って?

こんにちは。ライターの石川真弓です。
皆さんはコワーキングスペースに行ったこと、ありますか?
2011年頃から東京を中心に増え始め、今は大小様々なコンセプトのコワーキングスペースが全国各所に存在しています。

「共創」のためのコワーキングスペースの目的は、意識が高くスキルもあって、起業家精神やものづくりへの想いが溢れた多種多様な人達が集まり、セレンディピティが起こって、イノベーションの芽となるような新しい価値創造を生み出して日本を元気にしていく可能性を育む……という場所が多いようです。

ちなみに「シェアオフィス」と「コーワキングスペース」の違いは実は曖昧だったりするのですが、原理的に、コワーキングスペースは「コミュニティが中心」にあります。コワーキングスペースによって特色が分かれてて、そしてそこに集う人によって有機的にコミュニティが作られていく、そんなイメージですね。

そんなことを書くと、コワーキングスペースって一体どんなに素晴らしいものなんだ、という感じなのですが…

でも、実態はどうなのでしょう? 本当にコミュニティが機能しているの?本当に素晴らしい人々が集まっているの?そしてビジネスモデルとして成立しているの?

そんなわけで、数あるコワーキングスペースの中でもよく話題にあがる、TECH LAB PAAKの運営に携わるリクルートホールディングスの岩本亜弓さん、co-ba事業部マネージャーの奥澤菜採さんに、お話を伺ってきました。聞き手はFabCafeのPRも務める石川真弓です。THE BAKE MAGAZINE編集長でありつつ、TECH LAB PAAKの利用者でもある塩谷(しおたん)も同席。

コワーキングスペースやコミュニティ運営に興味がある!」なんて方にも参考にしていただければと思います。

まずはお2人からのインタビューから、それぞれのスペースについての概要をば!

TECH LAB PAAK

TECH LAB PAAK は、渋谷のアップルストアの上にある、リクルートが運営するクリエイターのための会員制のコワーキングスペース。2フロアのスペースには電源・WiFiはもちろん、フリードリンクとスナック、大型ディスプレイ、会議室、PepperやVRヘッドセッドなどの新しいデバイスも備えます(その全てが無料!)。入居者は厳正な審査によって選ばれます。

出来た年月:2015年2月
場所:渋谷
席数:80席程度
料金:無料!
入居審査:あり
利用者層:自身のプロジェクトに取り組むITクリエイター、エンジニア。
20代後半が多く、学生も3割ほど利用しています。

ーー入居費も飲食費も全てが無料で使い放題、という夢のような施設ですが、どうやったら入居できるのでしょう?

th_ayumi「本気で世界をよりよくするイノベーションを生み出したいITクリエイター・技術研究者を対象に3ヶ月ごとに募集を行い、選ばれた個人・チームは半年間無料で入居できます」

ーー渋谷に無料で入居できる…となると、応募者が殺到するのでは?

th_ayumi「はい。詳しい数は言えませんが、倍率はかなり高いですね」

ーーどうすれば審査に通るんでしょう?

th_ayumi「審査基準は2つしかありません。私たちが心から応援したいプロジェクトかどうか、そしてその人達が本当にそのプロダクトを実現したいかどうか、です」

ーー素晴らしいですね!でも、お話を聞く限り、収益性が一切ないと思うのですが…どんな事業モデルなのでしょう?

th_ayumi「リクルートの新規事業の一環として運営されているため、コワーキングスペースとして収益を上げようとはしていません

このTECH LAB PAAKを通してオープンイノベーションを生み出すのがミッションなんです。短期的な投資効果や収益は考えておらず、5年〜10年のレンジで、リクルートと一緒に仕事できるような会社が生まれたり、投資できるような会社が生まれることを目指しています」

ーーさすがリクルートさんです…。半年が経つと、みんな旅立っていくのでしょうか?

th_ayumi「はい。入居したチームは全員、卒業生成果発表を行うことになっていて、そこには投資家やメディアが集まり、事業化の可能性をマッチングする場を提供しています。500 Startupsのファウンダーや、元楽天の安武氏、C Channelの森川社長など、スタートアップ業界のキーパーソンがいらっしゃるんですよ」

ーー至れり尽くせりで羨ましいです。ですが、そこまでサポートしたいような人材が集まっていると、外からも中からも、引き抜きも多いのでは?

th_ayumi「あ、会員がいかに優秀でも、PAAK内ではヘッドハンティングは禁止なんです。もちろんPAAKで出会った会員さん同士で協業することはOKですが、それぞれ自分の実現したいプロダクトがある人ばかり。求人目当ての利用はお断りしているんですよ」

ーー話を聞くにつれ、スタートアップを立ち上げたい人にとっては理想的すぎる場所のような…。でもこれだけの環境とチャンスが整えられている分、より良いプロダクトやサービスを開発できないと意味がない…!というプレッシャーも大きいのではないでしょうか。

ちなみに半年で退去する前提ですが、実際に「もっと居たい!」という会員が大多数なのだとか。卒業生成果発表で受賞すると、PAAKを引き続き使う権利が付与されるんだそうです!

続いて、TECH LAB PAAKより3年歳上のコワーキングスペース、co-baのことを聞いてみましょう。

co-ba

co05

co-ba は、全国15拠点に展開するシェアードワークプレイスのネットワーク。コワーキングスペース。そのco-baネットワークは、場の発明カンパニー・株式会社ツクルバが運営しています。ツクルバを立ち上げたの創業代表者2人は、もともと不動産デベロッパーで働いていた同期だそう。

出来た年月:2011年12月(渋谷が最初)
場所:渋谷、赤坂、大塚、調布、田町、下北沢、気仙沼、呉、郡山、飛騨高山、花巻、鹿児島、新潟、近江八幡(7月OPEN)、西池袋(今秋OPEN)の全国15拠点
席数:渋谷は50席。各地によって異なる
料金:月額15,000円のネットワーク会員は全国共通で、全国のco-baを行き来できる。各拠点のみのローカル会員や固定席、個室などのプランも拠点により多彩に用意されている
入居審査:あり(渋谷は現在満員御礼のため8月まで入会待ち)
利用者層:ITスタートアップチーム、様々な分野の起業家、デザイナーや建築家などのクリエイターなど。20代後半〜30代を中心に、60代の起業家まで多様

 

ーーco-baは全国にたくさんあるんですね!どんな事業モデルになっているのでしょう?

th_oku「一番最初に誕生したco-ba shibuyaは、株式会社ツクルバ直営で運営しており、月額の会員料金、イベント貸切などのスペース貸しをメインの収益としたビジネスモデルです。
全国に展開するco-ba networkの各拠点は独立した経営となっており、それぞれのオーナーに委ねられ、特色もさまざま。つまり、ツクルバが全部直営するのではなく、緩やかなフランチャイズ(全く同じものを展開する訳ではないので、パートナーシップと呼んでいます)として展開し、ネットワークを広げています」

ーー各拠点が独立しているんですね。その各地のオーナーには、どうすればなれるのでしょう?

th_oku「まずは面接させていただいて、co-baを開いてどんなコミュニティを作りたいか、地域の中でどんな存在になりたいか、ということなどを伺います。独自性と熱量、同じ目線で長くお付き合いできるか……というようなことをを重視していますね。不動産活用として収益性を重視する…というよりも、ワーキングコミュニティとして捉えています。

そうしてco-ba networkに参加することになった場合は、パートナーシップフィーを頂いて、運営のサポートを私たちツクルバで行っています。ですが、継続して場を活かしていくのはそれぞれのオーナーさんや地元の方です。ですから、直接的な送客や手厚いサポートはあえてしていません。もし関心がある場合には、まずco-ba shibuyaにいらして頂いています」

co07

ーーお話を聞いていると、リクルートさんだけではなく、ツクルバさんも「コワーキングスペースで儲ける!」というビジネスモデルではないような……。

コミュニティ運営のこと、気になる収益のことなど、お二人に詳しく伺っていきましょう!

「作業するための1人の空間が欲しい」という人には、別の場所をオススメすることも

左:TECH LAB PAAKの岩本さん、右:co-baの奥澤さん
左:TECH LAB PAAKの岩本さん、右:co-baの奥澤さん

th_mayumi(石川)「コワーキングスペースを立ち上げても、しっかり運営していかないとコミュニティは育ちませんよね。コミュニティリーダーとして日々働かれている上で、日頃から工夫したり意識していることを教えてください」

th_ayumi(岩本・TECH LAB PAAK)「この会員さんとこの会員さんは引き合わせたほうがいいな、と思ったらどんどん繋げていきます」

そして、TECH LAB PAAKにはスタートアップを学生時代に立ち上げてそのまま卒業後も経営していった方や、現在学生の方も多くいます。そうすると、社会人経験がほぼないため、ビジネス以外の世の中のルールや契約関係のことを知る機会が欲しい。例えば弁護士さんの相談なんかすごく需要があったりして、サポートのになってきました」

th_mayumi「弁護士さんが無料相談! すごいですね。 co-baさんはどのように入居者の方を迎えられているのでしょう?」

th_oku(奥澤)「co-baでは、入居希望の方とは全員一対一で、co-ba事業部のスタッフが面談をしています」 一同:全員と面談しているんですか!?

th_oku「はい。お話をしてみて、仕事内容や人柄、どんな夢を持っているか、co-baに何を求めているかなど、カジュアルにお喋りする感覚で、実は一番力を入れています。

co-baはコミュニティが特徴なので、単純に作業するための、1人の空間が欲しいという方にはほかのスペースをオススメさせてもらうこともあります。 とくに上のフロアにあるco-ba libraryでは“喋っても良い図書館”といった雰囲気を大切にしていて、そこから良い人脈が生まれるように、私たちも繋ぎ役として動いていたりします」

co-ba shibuyaの5Fは集中しやすいスペースで、モニターを持ち込んで作業する姿も(左)と、1日利用や見学者も多く、夜はイベントスペースにもなるco-ba library(右)

th_ayumi「うちも、2フロアに分けています。下のフロアはざわざわしていて、上のフロアは集中スペースみたいな感じにしていますね」

TECH LAB PAAKの6F(左)はガヤガヤ、7Fは会議室もあって集中してプロジェクトに取り組めるようになっています(右)。

th_mayumi「やっぱりフロアと空間の使い分けって大事ですよね。他に、コミュニティを続けている上で大事にしていることってありますか?」

th_oku「co-baでは、会費を払って頂いているからサービスを提供する側される側という関係だけではなく、会員さんも一緒にco-baを作っていく、という雰囲気を大事にしています。毎月交流会や、ランチ会も頻繁にやっていて、その企画から一緒に入ってもらったり。意識的に、仕事以外で交わる時間を作るようにして、参加したくなるような雰囲気づくりを心がけています。単なる名刺交換だけで終わるような異業種交流会ではなく、人間的な繋がりから、新しいビジネスが生まれるような土壌を作りたいと思っています。」

th_mai(塩谷)「co-baって、いつも面白そうなイベントされてますよね!日本酒とか、食関係のイベントがあって、すごく気になってました」

毎月開催されているco-ba shibuya交流会。会員でなくても参加できるオープンな雰囲気。
毎月開催されているco-ba shibuya交流会。会員でなくても参加できるオープンな雰囲気。

th_ayumi「私自身大事にしているのは、自分が常に外と接点を持ち続けることですね。コミュニティって普通にやっていたら衰退するだけ。1期は必然的に盛り上がりましたが、その熱量を継続していくために、私達もいろんなところに出て行って、協力者を求めにいきます」

th_mayumi「それぞれに特色のあるコミュニティが育ってる……というよりも、かなり意識的に育てておられるんですね。ちなみに、オンラインでの交流ってどうしてますか?」

th_ayumi「Facebookグループがあって、みんな自発的に投稿してくれています。オンラインではいかに協力者を集めるかが大事で、有り難いことに会員さんが宣伝してくれます。6Fのフロアにあるモニターでは、ハッシュタグが入ったツイートを常時表示していて、みんながつぶやいてくれてます」

th_mai「わたしは半分入居者の立場ですが、このモニター、めちゃくちゃありがたいんですよね…。実際、突然話しかけるのは緊張するし、人違いだったらどうしよう…って不安もあるんですけど、気になる人がツイッターでハッシュタグつけてツイートしてくれてるとこの人だ!ってわかって話しかけやすいですし。Facebookグループで事前に絡みがあると、話しかけるハードルも下がります」

TECH LAB PAAKに関するツイートが表示されるモニター
TECH LAB PAAKの利用者(卒業生含む)が入れるFacebookグループでの様子

th_oku「うちもまさに同じ感じで、Facebookグループで交流していますね。現役メンバーだけではなく、卒業した方も参加しています。卒業後もco-baを母校のようにして愛着持って頂いている方多いのもco-baの特徴です」

コワーキングスペースは、不動産ビジネスとしては儲からない!

th_mayumi「こうやってコワーキングを運営していると、自治体とかデベロッパーとか、いろんな方が「一緒に何かしたい」「お話を聞きたい」と訪ねてくるのでは?」

th_ayumith_oku「「いらっしゃいます!」」

th_mayumi「そうして来られた方には、どのようなアドバイスをされてるのでしょう?」

th_oku「co-baの運営母体は不動産業を営むツクルバなので、同業の方からのリサーチが多いのですが、まずは「不動産ビジネスとしては儲からない」ということを伝えますね」

th_mayumi「バッサリと!」

th_oku「そこは正直にお伝えしてます(笑)。席を何個作って、いくらの会費で回していく…という考えの不動産ビジネスとしては、かなり立地に左右されてしまいます。コワーキングって会員さんも多い分、コミュニティ作りや日常管理もてまひまのかかる業態なので、不動産ビジネスと考えるとそんなに美味しくないんですよ(笑)」

th_mayumi「では逆に、どんな方が理想的なのでしょう?」

th_oku「co-baは単なる場所貸しを越えたコミュニティを重視しているので、理想像…というと、何かしら本業があって、その人や企業にとって有益なコミュニティを前向きに育てていきたい方、というくらい条件が限定されてしまうかもしれません。

でも、実際にco-baのオーナーを志望される方はこうしたコミュニティを自分の本業に還元できる人が多いですし、そうした方と一緒にco-baを広げていきたいんです。

コミュニティ作りはゴールがないので、定期的に各拠点の運営者を対象にコミュニティーマネージャー研修というのも開いています。 ツクルバの中でもco-baは、ルーツとなる最初の事業で、こうした“つながり”が生まれる場所で、他の事業にも生かされているからこそ、5年間ずっと大切に事業を続けているんです」

オープイノベーションは魔法のことばじゃないから。意義のある形で、この場を育てていきたい

th_ayumi「”何か一緒にやりましょう”とお声かけいただくことがあるのは、すごく光栄なことです。でも、オープンイノベーションは魔法のことばじゃない…とも痛感しているんです。利益にとらわれてしまったり、協業することの意義が見えないまま何か一緒にするのでは意味がないですよね。開かれた場所だからこそ、理解のある方々とこの場を一緒に育てて行きたいです」

th_mai「たしかに。あっちこっちと繋げて、イベントをやって……ばかりだと、入居者の方々も本当に有益なつながりを得られなくなってきますよね。岩本さんがそうして目を光らせてるからこそ、TECH LAB LAAKブランドが出来ていくんだなぁ」

th_mayumi「たしかにFabCafeにいらっしゃる方も、売上はいくらか、コストはいくらか、成功事例を知りたい、というような部分を特に気にされる方がいらっしゃるのも事実です。

でもお二人のお話を伺って、場所とコミュニティって一朝一夕ではできるわけではなくって、少しずつ育てて価値を産んでいくものだな、とあらためて思いました。

奥澤さんも岩本さんも、その空間と人を愛しているからこそ、大切に大切にコミュニティを育んでいることが伝わります。 今日はすごく勉強になりました。ありがとうございました!」

th_5682112E-FE7C-4EC6-88F9-203C92F1E099 ・TECH LAB PAAK ・co-ba

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