2016.08.11

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夏でも「サクサク」のタルトが食べたい。タルト内の水分活性を調査して実験を進めた結果…

夏でも「サクサク」のタルトが食べたい。タルト内の水分活性を調査して実験を進めた結果…

2016.08.11

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こんにちは。OPEN LABの大嶋です。 BAKEの研究開発部門「OPEN LAB」では、BAKEのお菓子をもっと美味しくするために、科学的なアプローチで日々試行錯誤を重ねています。 th_IMG_0935 ……などというお決まりの紹介文はあるものの、「で、具体的に何してるの?」と突っ込まれる率100%。その実態については、社内の別部署の方にすらあまり知られていない気がしています。 OPENと名がついていながら閉鎖的だなんて形容矛盾もいいとこ!そんなわけで今日は、最近OPEN LABで取り組んでいる研究について、ちょっぴりご紹介させていただくことにしました!

暑い夏の環境に負けないタルトを作りたい

th_tart すっかり冷房が手放せなくなり、暑さと湿気にやられている方も多いのではないでしょうか。実は、夏にバテるのはヒトだけではありません。お菓子もバテるのです。BAKEでは例年、夏場になるとチーズタルトのタルト部分が少しふんにゃりしてしまうことが時々起こります。 しかし、BAKE CHEESE TARTの魅力は、外はサクサク、中はトロフワの食感。タルトには年中無休でサクサクでいてほしい。そこで発令されたのが、「夏の環境に対抗する方法を調べよ」というミッションです。 タルトがふんにゃりする原因として、まず思いつくのは夏の湿度の高さではないでしょうか。私も実験を始める前はそう踏んでいました。 ところが、チーズの入ったタルトとチーズの入っていないタルトカップのみを、様々な温度・湿度の環境下に置いてサクサク具合の変化を追ってみたところ、湿気よりも気温の高さの影響が大きいことがわかりました!気温が上がるにつれてチーズがゆるくなり、チーズの水分や油分がタルト部分に移動することで、タルトがふんにゃりしてしまうのです。

チーズの水分や油分がタルト部分に移動している様子
チーズの水分や油分がタルト部分に移動している様子

そうなると夏の環境に対抗するには、湿度や温度が上がるのを阻止するのが良さそうです。 方法としては大まかに、焼き上がったあとの環境を調整するか、焼く前に外気の影響を受けにくいような工夫をするかの2パターンと考えました。 そこで、チーズタルトの製造から提供までの一連の流れから、タルトのサクサク感を左右しそうな変数を洗い出し、その中でOPEN LABの空間で条件が再現できるものについて、一つ一つ検証しました。

ふにゃり具合は数値化できる

今回、タルトがふにゃふにゃかサクサクかを客観的な数値で表すのに役立つ装置がこちらの「水分活性計」です。 th_IMG_8078 水分活性(Aw)とは、食品中に含まれている”動くことのできる水”の割合です。実は、食品の中には、他の成分と結びついて動かない水(結合水)と、100度になれば蒸発し、0度になれば凍るように自由に動ける水(自由水)の2種類が含まれています。

http://www.gsk-clean.com/tech.html より
http://www.gsk-clean.com/tech.html より

動くことができる自由水の増減を見ることで、ふにゃふにゃの原因に迫ることができるのです。数値は0.000〜1.000の間で表され、たとえばAwが0.800であれば、その食品の湿度は80%に相当すると言えます。 そこで、どのような条件だとAwの数値が下がるのか?ということを調べるために ・オーブン内で高温高湿を模擬したり ・湿らせたティッシュを水槽の中に敷き詰めて高湿のみを模擬したり ・包装をプチプチで覆ってみたり ・乾燥剤を入れてみたり …と、手作り感満載なさまざまな条件でタルトを小一時間放置し、普通に室内に小一時間放置したタルトとAwを比較して、温度や湿度のサクサク感への影響を見ました。 このうち、一つだけ、タルトを焼いた直後の粗熱を取るときに「温風」を吹きかけながら行うと、Awの数値が下がる傾向にありました! th_スクリーンショット 2016-08-03 10.48.11 つまり、チーズタルトを焼いた直後に温風を吹きかけてあげると、タルト生地がサクサクのまま保たれる、ということ! こうした結果がでますと、店舗にディスプレイしてあるタルトの上部にヒートランプとファンを設置するなどの、店舗環境の改善案につなげることができるのです。 (検討中でまだ導入はされていません。) また、もしお買い上げいただいたタルトがご自宅でふにゃっとしてしまった際には、電子レンジのオーブン機能を使って、200°Cで5分間加熱すると復活しますよ!(ただの電子レンジだとチーズの中身が出てきてしまうので、オーブン機能をご利用ください。)

クロッカンシューザクザクのかたちも綺麗に

ほかにも、OPEN LABでは幅広い実験をしています。たとえば最近では、「クロッカンシューザクザク」をもっと綺麗な形に焼き上げるために、天板の種類を変えてみたり、特別な型を作ったりして、様々な焼き方を試してみています。 型を使うと、こんなにも焼き上がりに違いがでるのですよ!

上段:型をつかったもの 下段:通常の焼き方
上段:型をつかって焼いたもの 下段:通常の焼き方

こちらも店舗で使えるものに改良して、みなさんにより綺麗な商品をお届けしていく予定です! OPEN LABは今年出来たばかりで、まだまだ研究設備も十分ではありませんが、日々地道にできることを進めております。また、顧問である宮城大学の石川先生にご協力いただきながら、「おいしさとは何か」に迫っていく研究も実施していく予定です。今後もOPEN LABでの活動を逐一ご紹介していく予定ですので、ぜひご覧ください! また、お菓子のおいしさについての科学的な研究をご一緒に行ってくださる方も募集しております!個人様でも研究機関様でも歓迎します。興味のございます方は、ぜひoshima☆bake.co.jp(☆=@)までご連絡くださいませ。 Text by 大嶋絵理奈 ( @minamo_ca

こちらも併せてどうぞ!

・キッチンが実験室に!?分子料理を作って楽しめる「Molecule-R」の分子料理キットを体験してみた ・【お菓子×科学】お菓子をおいしいと感じる理由って?原材料と食感の関係は?理系のインターン樽見が調査しました! ・株式会社BAKE 採用情報 ・株式会社BAKE Facebook

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